20世紀初頭のフィンランド。9歳の少女カトリは、3年前にドイツに出稼ぎに行った母の帰りを待っていたが、戦争のため音信は途絶えていた。苦しい家計を助けようと、カトリは働きに出る…。アウニ・ヌオリワーラによる原作をアニメ化した、1984年放送作品。この作品で、日本アニメーション制作の「世界名作劇場」は10本目を数えることとなった。 ライッコラ屋敷で家畜番として働くことになったカトリは、ときに窮地に立ちながらもさまざまなことを学び、家の主人たちから信頼を得るようになる。1年後、クウセラ屋敷へ移ったカトリは、そこでもかけがえのない出会いをするのだった…。 あちこち移った末に母親と再会するラストは『母をたずねて三千里』を連想させるし、幼くして働きながらも別のこと(カトリの場合、読書)に関心を持つのは『フランダースの犬』のネロに通じる。それらの主人公たちと違うのは、カトリが決して自分の境遇を悲観しないこと。むしろ「いろいろなことを学べる」と楽しんですらいるように見える。「世界名作劇場」が始まって10年、求められる主人公像も変わってきたのだろう。 全編を通じて主人公を苦しめたりする存在がいるわけではないが、物語はほどよい起伏に満ちている。牧場での生活の情景も心をなごませてくれる。「名作」シリーズらしい、心おだやかに見られる良作である。(安川正吾)
作り手の思いが伝わってきました。
世界名作劇場の作品、どれも手抜きのない、真剣勝負な作品ばかりですが、その中でもやはり作り手の思いが 垣間見える一瞬があると思います。ここさえ見てくれたら、もうそれで十分伝わる、そんな一瞬です。例えば『ナンとジョー先生』で字の読めないナットが自分に自信を持つためにおまじないを唱える場面であったり、 『私のあしながおじさん』でふと、たいした前触れなく風景が全て止まり、ジュディが「みんながんばってる」と 独白する瞬間であったり…。私は、カトリの思いは第三十話に凝縮されていると思います。 前のお屋敷の奥様に「医者になどとてもなれない」と言われ、帰り道、唐突に親しい人との別れを迎えます。 そんな一日の最後、お屋敷のぼっちゃんに「みにくいアヒルの子」を読んであげながら、涙を流してしまいます。 人の大きさ、温かさ、マルティの台詞にもあった「夢は必ずかなう」というこの物語のテーマが一日の描写から伝わってきました。 貧しい家畜番から夢をかなえるために努力する、というこの物語、私は大好きです。 いちばん所得格差が少ない現代日本でさえ、学歴序列は所得序列と高い相関係数を示すし、私自身、そこからの 脱却を模索していた節があります。なんだか自分の境遇をカトリに重ね合わせて見てしまいました。 また、この話のおかげでアンデルセンのすばらしい童話集に出会うことができました。 この第30話からは、作り手の真剣な思いが痛いほどに伝わってきて、心から大好きです。 この物語に出会えてよかった、と思える瞬間でした。 また、残りの3話も一生懸命算数を勉強したり、靴屋の親方の御伽噺を聞いたり、とカトリらしいおもしろい話で大好きです。
バンダイビジュアル
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