誇張無く最高の戦闘フィクション
このテのものによくありがちな、自己ヒーロー伝のような自慢めいたところが全くなく、英国風フェアプレイ精神と言うにはあまりにすごい体験をサラリと書いています。マクナブの「SAS戦闘員」のインパクトは強かったのですが、本書はそれ以上です。マクナブが一戦闘員という視点から様々なことを見ているのに対し、本著者ハンターは完全に現場を牛耳る下士官という視点から見ていることに気付きます。さすが兵としては最高位の一等准尉まで上り詰めた人です。観察眼、洞察力、あらゆる点で卓越しています。解説にもあるように本書のヤマはアフガン潜入でしょうが、それ以外にもザイール派遣時の著者の部隊指揮など、読みどころ満載です。
近年の特殊部隊ブームで、素晴らしい装備やハイテクにばかり注目が集まっていますが、そういうものを使いこなせるのはこのように地味で徹底した訓練を積んだ著者達のような存在だからということを思い起こさせてくれます。
昨日の狩るものが、今日は狩られる
ミル24ハインド。かつて、この不恰好な戦闘ヘリはアフガンにおけるソビエト軍事力の象徴として別格の存在でした。 本書にも凄惨な描写があるとおり高射砲を避け山並にそって飛来するハインドに捕捉されたら、一方的な殺戮が終わるのをただ待つしかないという圧倒的な優位を誇っていたのです。その強烈なイメージ、西側に及ぼした脅威の度合いというのは、身近な例では「ランボー3/怒りのアフガン」「若き勇者たち」などの作品中での、暴力的で不穏な気配を纏った侵略の尖兵という様な描写からも感じ取れたものです。今日でもゲーム等に、そこそこの扱いで登場することなどから当時の残響を拾うことが出来ます。 そのハインドの脅威を取り除ける兵器、スティンガー地対空ミサイルの供与/訓練をゲリラに行う為に著者が単身、アフガンに向かった顛末を読めるというのが本書の価値です。このプランの達成によって、ハインドはその後300機あまりが撃墜されました。かつての優位は完全に失われたのでした。 また、クリス・ライアンやアンディ・マクナブの兵士としては優秀でもハッキリいってチンピラっぽい言動にウンザリされた向きにも、軍隊を支える背骨としての下士官に相応しい著者の落ち着いた語り口は気に入って貰えると思います。
特殊部隊員の色々なお仕事
本書の圧巻はアフガン戦争でしょう。著者は極秘にアフガニスタンに入り、ソ連と戦うムジャヒディーンにスティンガーミサイルの使い方を教えます。経験した者ならではの生々しい戦場の描写には、圧倒させられます。気持ち悪くなります。よくこんな地獄から生きて帰って来られたものだと感心します。 また、著者は『ブラヴォー・ツー・ゼロ』や『SAS戦闘員』のアンディ・マクナブの上官でした。マクナブの著作と重なる任務も出て来ますが、立場の違いもあるためか、書かれていることが全く同じということはありません。むしろ、合わせて読んだ方が「あれはこういうことを書いていたのか」と納得できます。
並木書房
SAS戦闘員―最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録〈上〉 (ハヤカワ文庫NF) ブラヴォー・ツー・ゼロ―SAS兵士が語る湾岸戦争の壮絶な記録 (ハヤカワ文庫NF) SBS特殊部隊員 SAS・特殊部隊 知的戦闘マニュアル―勝つためのメンタルトレーニング 暗闇の戦士たち―特殊部隊の全て (朝日文庫)
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