東西登山史考 (同時代ライブラリー (223))



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登山史の白眉

 日本の山岳の特徴を、雪や氷のないしっかりとした足場と捉えることで、明治期に確立した日本の登山を分析している。アルプス登山は雪や氷を踏み分ける行程であり、足下への注意が欠かせない。これに対し日本の山では、それほど足場への注意をする必要がない。そのため登山と景観の概念が強く結びついたとするのである。ここから山と登山者との心理的距離が指摘され、なるほどと肯かされた。ヒマラヤ登山の開始と発展についても卓見が述べられ、これまで読んだ登山史関係の書物では随一の内容であった。
 概して登山史関係の書物は英雄的な登山者を列挙・崇拝するに留まり、まったく深みを欠くものが少なくない。というのも登山史の書物は、みずからも登山をたしなむ者が著者であるケースが多く、距離を取って客観的に扱うことが出来ていないことが多いのである。本書はしかし、著者が登山経験から得た感触を取り込みつつ、非登山者にも共感できる良書となっている。
 ただ、末章で槇有恒、松方三郎、今西錦司を扱うに際し、彼らの人間的豊かさを過度に誇張する姿勢には疑問を感じずにはいられない。どうしてこのような盲目的崇拝が可能なのだろう。登山家とは決して理解し合えないと感じた。



岩波書店







         
         
         
         



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